インターネット由来の健忘症

2019年8月21日水曜日

心理学

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新しいタイプの健忘症

私たちは今やスマートフォンやパソコン本体、またはインターネット上における特定のアカウント、共有サービスへ莫大な情報を記憶させるようになった。私たちはこれらを第二の脳として活用しているのである。この過程でデジタル健忘症と呼ばれるような状態におかれるようになった。

1990年代からIT分野の先駆者たちは「インターネット上に拡散された情報は永久に残る」といっていた。しかし近年、彼らも予想していなかった、インターネットと新しい健忘症の関係について専門家から警鐘を鳴らす研究結果や意見が発表された。


専門家たちの意見

この新しい健忘症の症状として集中力の低下がある。2015年に行われたマイクロソフトの調査では集中力の平均持続時間が2000年では12秒だったが、2015年では8.25秒に減少した。ちなみに金魚の平均集中持続時間は9秒である。

ジャーナリストのニコラス・カーによれば「インターネットは私たちの脳を散漫に生きるよう誘導している」「一度に多くの情報が表示されるために、あるコンテンツを見ている時、前に見たものをすでに忘れている、ということが起こっている」と述べている。

スイスの熱帯公衆衛生研究所は「携帯電話からの放射線が青少年の脳にダメージを与え、記憶力に悪影響を及ぼす可能性がある」との見解を示している。

ドイツの神経科学者マンフレッド・スピッツァーによれば「検索サイトに頼りすぎることで個人の記憶が縮小し、"デジタル認知症"が発生している」という。


もたらされる弊害の具体例

こういった背景から、インターネット上では歴史的人物についての誤謬がしばしば発生している。例えば哲学者である"エピクテトス"と"エピクロス"の両名は互いの語録の引用元がよく間違えられている。

2016年のアメリカ大統領選挙ではドナルド・トランプがヒラリー陣営に対して「はじめに彼等は無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろう。そうしてわれわれは勝つのだ」といっている。

これは一般的にはマハトマ・ガンジーの語録から引用したものだとされているが、彼がそんなことを言ったという記録はない。

2015年、アメリカ合衆国郵便公社(USPS)はマヤ・アンジェロウ追悼切手を発行したがそこには彼女が書いていないフレーズが印刷されていた。そのフレーズはジョーン・ウォルシュ・アングランドの著書「A Cup of Sun」からのものだった。


思考の土台に記憶がある。正しい思考をするためには正しい情報をインプットする必要がある。つまり上記の情報は社会が正しい思考を失いつつあることを意味している。

真偽ない混ぜになった莫大な情報量、SNSを通じて他者と繋がりっぱなしの状態、そしてITに追いつけていない法整備と、インターネットの早すぎる発達はそうさせる土壌としては十分すぎるものがある。

思考力の欠如した大衆は容易に扇動され、無責任な支持や想像力の欠如した行動を取り出す。結果として民主政治は衆愚政治とかし社会が不安定化する。

改善しようにもインターネットは社会活動において便利すぎて、今更流れを止めたり遅らせたりはできないのでこの傾向はさらに深まるものと思われる。

具体的にいえば格差社会と相まって、今以上に衝動的、自己中心的な犯罪が増え治安が悪化するということである。

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