親しい人と一緒にいることが精神的幸福を得ることにつながると、いちいち主張する人はいない。もはや当たり前のことだと皆思っているし、実際にそういったソーシャルサポートが精神的な健康の維持に貢献しているとする多くの研究結果もある。
最近行われたノースダコタ大学の研究では、それを異なる見方から分析した。すなわち、”親しい人との長期的な関係は個人の成長につながるか”についてである。
今回使われたデータは、もともと”MIDUS”という1990年代半ばから発足した調査団体に登録されたものが元になっている。当時20-75歳にあたる7108名がサンプルとして登録されていた。
その中から2005-2006年に4663名、2013-2014年に、更にその中から3294名と計2回の再調査を受けてもらった。被験者の欠落は長期調査にはつきものだが、今回使用された新しい統計モデルによってそれらを補うことにも成功しているという。
この研究の目的は仕事や肯定的な人間関係、精神性といった社会的要因が個人の成長性にどの程度影響するかということだった。
成長性とは”回復力、対処能力、人生の満足、自己実現、自律、環境への適応、他者との前向きな関係”といった幸福につながるものであると定義されている。また、高いレベルで成長した個人は、人生で苦難に遭遇してもそれを乗り越えられるようになるものらしい。
研究では被験者を”親しい人たちと関係を継続させている”グループと”そうでない”グループに分け、
「私は人生を通じて学習し、変化し、成長を続けてきた」
「自分自身にも世界にも、新しい挑戦を続けることが重要だ」
「私はだいぶ昔に自分自身を変えることを諦めた」
といった成長度に関するアンケートに答えてもらった。そしてその結果を成長スコアとして記録し、90代半ば当時、35歳だった人と55歳だった人を分けて変化のパターンを調べた。
その結果、”親しい人たちと関係を継続させている”グループは20年を通じて成長を続けていたが、2005-2006年にかけては全ての参加者が落ち込んだ。これは9.11事件が影響していると考えられている。
そしてその後、テスト期間終了時までに55歳のスコアがもっともリバウンドした。つまり、条件が同じであるなら良い人間関係は若年者より高齢者の方により大きな成長をもたらすということが分かった。
これはかねてよりあった「高齢者への対人関係における長期的保護は成長につながる」という研究結果を補強するものであるらしい。
私は友人たちとも親戚ともつきあいは大事にしており、2,3ヶ月に1度は皆で集まって近況報告をするようにしている。親戚の方は本土からも毎回やってくる。
どちらの場合も定期的に顔を合わせるようになると、自然と周りに迷惑をかけまいと仕事や勉強に打ち込む気力が湧いてくるのが実体験としてあるから、今回の研究結果を見てもすぐに納得できた。
なんでもすぐに手に入るようになったことで他人がどんどんリスク化して付き合いが希薄になりつつあるが、人間は社会的生物として進化してきたわけだから、仲良く付き合った方が良い影響があるに決まっている。今後ともこのような研究を続けて科学的にそのことを証明してほしい。
0 件のコメント:
コメントを投稿