境界性人格障害患者の神経回路網

2019年8月26日月曜日

心理学

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境界性パーソナリティ障害(BPD)の患者は、その症状によって不安定なアイデンティティ、気分の浮き沈み、対人関係の問題、自傷行為といった生活上の問題を抱えている。

BPDの治療法として、心理療法や薬剤投与があり、薬剤については以下のものがよく使われる。

・気分安定薬…怒りや衝動的な行動の抑制といった効果がある。

・抗精神病薬…解離性障害や同一性障害といった「認知-知覚問題」に効果がある。

・抗うつ剤…使われる薬剤の中では最も効果が低いものだが、それでも一部の患者には有効である。

これらは患者のよって処方が異なる。また、全ての患者に対して有効なアプローチは発見されていない。


ミネソタ大学による研究

ミネソタ大学では、BPDを神経生物学の観点から分析し、薬物療法による治療をより的確に行うための研究を進めている。

BPDは心理療法での治療も行われているが多くの場合、精神薬理学的な介入を必要とするからだ。

研究チームは機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による検査で、BPD患者の扁桃体が否定的な情報に対して過剰な反応を示しているという事実に注目し、BPDに関係する神経回路が治療によってどのように変化するのかを調査した。

被験者はBPDと診断を受けた18~45歳の成人19名で、8週間にわたって検査を受けた。最終的に13名分のfMRIデータが集まった。

検査中、被験者は抗精神病薬を投与された治療グループと、偽薬のプラセボグループに分けられていた。


研究の結果

研究チームが予想した通りBPD患者たちの脳は、刺激に対してそれぞれ異なった反応を示していた。

衝動性(自傷・過度の飲酒・浪費)が高い人は恐怖に関する学習を行う、右扁桃体と左海馬間の接続が増加していた。

認知障害(同一性障害・パラノイア・解離性障害)が強い人は左扁桃体・左側頭葉・左海馬での恐怖感を低下させた。したがって認知障害は衝動性とは異なる部分が活性化していると考えられる。

対人関係が乱れている人は右扁桃体と右前頭葉が活性化していた。

サンプル数が少ないため、BPD患者の症状を軽減する特定の薬を見つけ出すことはできなかったものの、BPD症状と脳の活性化パターンの関連が判明した。これにより個別の治療アプローチを追求できる可能性が示唆された。

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