冷静に政治の話をするにはどうするべきか

2019年8月20日火曜日

心理学

t f B! P L

日本人は割と政治に関心がない人が多かったが、年々日本の経済状況が悪化していくにつれ、徐々に政治問題を気にかけているようになっている。一般人たちから3ヶ月で2億円以上の寄付金を集めたれいわ新選組が良い例である。

しかしそれでも政治談義はしばしば論争にしかならず、不毛なものだと思われている向きがある。そしてその原因は価値観の違いにあるからだとされているが、本当にそうだろうか。

政治に関する情報は、ネットメディアには溢れかえっている。人々は多くの場合、TPPだとか移民だとか予算配分だとか、議論が起こる難しい問題についての詳細を、まず自分がポジションを取っている思想側のメディアソースから得ようとする。まとめサイトとか、Twitterの特定のアカウント、YouTubeなどからである。

問題の詳細は経由するメディアソースが受け取りやすいように情報を簡略化し、そして”思想色”をつけて提供する。まあ大体が対立している政治勢力の悪口である。

それにもかかわらず、受け取った人たちは実際よりも物事について深く知っていると錯覚する。エール大学の心理学者レオニード・ローゼンブリットとフランク・キールはこういった現象を「情報深度の錯覚」と名付けている。

例えるならジッパーや冷蔵庫の基本的な仕組みは誰でもわかるが、それで全部を分かったような気でいるようなものだ。実際にこれらがどのような部品からなり、その部品がどのように連動して用をなすかについて問われれば、たちまち答えに窮してしまうような。

アメリカの話だが共和党員にアンケートを取ったところ、民主党の36%が無神論者であると考えていた。しかし、実際は9%だけだった。逆に民主党員にアンケートを取ると、共和党員の44%は年収25万ドル以上であると考えていた。だが実際そんなに稼いでいるのは2%のみだった。

また、心理学者のテネル・ポーターとカリーナ・シューマンによる研究では、妊娠中絶や移民などの論争が起こる問題について賛成派、反対派両サイドの簡単な意見だけを伝えたグループと、より複雑な分析を加えた意見を伝えたグループとで分けて議論させた。その結果、後者のグループではお互いに満足のいく会話ができる傾向が高まることを発見した。

まとめると、冒頭の答えは個々人の無知による自信過剰が原因である。これは国家にとっても大きな問題だ。互いに見下し合い対立し、国民が分断される。民主主義である以上この問題を解決する方法は、一般人が各々のバイアスを政治問題から取り去り議論できるようになることだ。

そうすれば自分がいかに政治問題について、わずかなことしか知らなかったかということに気づき知的に謙虚になる。謙虚になればお互いの立場を理解した適切な妥協点を探しやすくなる。

民主主義政治が成立する条件は民衆に一定以上の知性があることである。これを失えばたちまち衆愚政治へと堕してしまう。私たちは流されるのではなく、常によく考えて政治に参加しなければならない。

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