メタファーについて考える

2019年8月24日土曜日

心理学

t f B! P L

私たちは小説家や詩人でもないが常にメタファー(比喩表現)を多用している。しかし、そのほとんどがよくある言い回しであるためにそのことを意識していない。私たちが日頃使っているメタファーはどういったものなのだろうか。改めて考えていきたい。


メタファーの効果

メタファーを使用すると、科学やテクノロジー、日常生活上の問題といった、複雑なことや新しいことを説明するのが容易になる。それは伝える際に自分の言葉だけでなく、相手の知識、想像力も活用するからである。

また、自身の思考や態度を整理するのにも使う。例えば「病魔と闘う」とか「人生を捧げる」などである。

文学や詩といった芸術的な領域では、読者の想像力や感情を掻き立てて、著者の創造的なアイデアに共感させやすくする。

この効果は日常のスピーチやテキストにも応用されている。適切に使用されればニュアンスやトーンが鮮明になる。

哲学や宗教では、自身の抽象的・主観的な考えや経験について伝えやすくする。例えば仏陀は「怒りとは、熱い炭を握って誰かに投げつけるようなものだ。無論、自身も火傷する」と言っていた。

このようにメタファーを使うと、知覚できる現実の問題を抽象的な次元に押し上げることができる。このはたらきによって私たちの思考は豊かになり、想像力が発揮されて、自己理解、相互理解が深まる。


メタファーと脳機能の関係

メタファーは人間が獲得してきた言語能力の中でも後期の方に位置する高度なものである。この柔軟な認知にはワーキングメモリー・語彙・推論・感情といった多くの脳機能を使っている。

これらの神経活動は前頭前皮質で行われているが、この前頭前皮質は加齢による衰えを受けやすい脳部位でもある。

なので年配であればあるほどメタファーを理解しづらくなる傾向がある。これは、左脳を損傷した患者も同様である。


メタファーは悪用もできる

メタファーは大昔から指導者や知識層が都合の良い情報(主義思想・歴史観・宗教的教義)を民衆に伝える手段としても重宝された。

例を挙げるとスサノオがヤマタノオロチを退治した話。あれは当時最先端のテクノロジーである製鉄技術を有していたオロチ族の族長8名を、酒宴の席で暗殺したという話だと思われる。

ナチスドイツはユダヤ人をネズミや病原菌に置き換えて迫害するようにプロパガンダを敷き、最終的に虐殺に発展した。

メタファーによって受け取った情報には自身の想像力や感情が混ざるため記憶に残りやすく、しかも後から否定しにくいという特性があり、近年ではセールスライティングの技術にも使われている。

情報化社会である現代は文字の洪水といっていい状況でありそういったものに触れる機会にあふれている。

メタファーは高度に知的な言語能力だがおかしな思想誘導を受けたり、買いたくもない商品を買わされたりしないよう「変だな」と思ったら自分をメタ認知して自衛してもらいたい。

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