DOI: 10.1080/15548627.2019.1630222
この研究ではマウスを使って、慢性ストレス時における海馬ニューロンとオートファージ(ある細胞が他の細胞を食べること)の発生に関するメカニズムを調べた。
その結果、慢性的なストレスはオートファージを引き起こす"SGK3"と呼ばれる遺伝子を発現させ海馬内ニューロンの減少につながる可能性があるということが発見された。
以前より慢性ストレス状態にあったマウスは、そうでないマウスに比べて海馬におけるニューロンの形成が抑制されていたという研究結果もあったため、これにより慢性ストレスが、二重の意味で海馬にダメージを与えるという可能性が出てきた。
このような強いストレスと脳機能の関係について、科学的なメカニズムの理解が進めば、「ストレスで精神を壊すのは甘えだ、根性が足りない」だなどという下らない根性論を振りかざす連中の一掃も進むことだろう。
そんな共感や想像力の足りない連中でも具体的な数値や影響を受けた脳の部分のレントゲンをはっきりと見せれば納得せざるを得ない。
この研究チームの一人は「"SGK3"の発現を阻害する薬を開発する必要がある」といっていた。確かに現時点で経済活動とストレスは切っても切れない関係にあるからその考えは正しい。
しかし、現代社会は情報革命によってルーティンワークを機械に任せられるようになり、その結果機械にはできない閃きや高次の推論といった創造性(流動性知能)の発揮を常に求められ続けるようになった。
そして海馬は記憶や学習といったその創造性の土台にあたる大事な器官である。それが慢性ストレスで減少するものであるなら私は将来的には高福祉で競争性の低い社会へ転じていく方がより合理的な解決になると考える。
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