NHK・BSプレミアム英雄たちの選択「平将門・謀反の真実~悪霊か正義の武士(もののふ)か~」の感想

2019年10月8日火曜日

歴史

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この番組では将門が国府を襲った後、新皇を名乗る直前の場面に着目し、そのとき彼の心にあったであろう選択肢をさまざまな分野の専門家たちが俎上に載せていた。今回挙げられた選択肢は”坂東を支配する”、”朝廷と和解する”である。

将門は”朝廷と和解する”べきだっただろう。自分の関わった戦が地方での内紛にすぎないことを強調して服従の意思を示せば、まだ朝廷に対する交渉にも芽が有りそうだし、むしろ関東における農民の窮状を訴える場としても利用もできただろう。

しかし資料によれば、当時の朝廷から派遣された国司の搾取は、余りにも酷いものだったらしい。将門は義に厚い人物だったというから一刻も早く農民たちを解放してやりたいという願望が強くあり、そこに連戦連勝の慢心が後押しとなって新皇宣言に至ったのだと思われる。

将門が犯した最大の失敗は、彼が救おうとしていた農民たちの性根を過大評価していたところにある。この時代の兵は伴類(ばんるい)と呼ばれる半農半兵の者が大半だった。彼らは農閑期には兵として戦さ場に連れ立ち、農繁期には農民に戻って田畑を耕す生活を送っていた。

坂東の農民のために戦っていた将門は農繁期に農民を一旦は返したものの、当然この期を狙って平貞盛らが襲いに来ることは想定しており、その時は農民たちも伴類として兵に戻り再び自分のために戦ってくれると思っていたに違いない。

しかし、実際は400名程度しか集まらず、2000名に及ぶ貞盛、藤原秀郷の連合軍に討ち取られてしまった。農民たちは自分のために戦ってくれていた将門の期待を裏切り、自分たちの農作(金儲け)を優先したのである。

前にも書いたが、弱い人間というのは見かけ上の振る舞いはどうあれ、そのほとんどが結局自分のことしか考えられない。将門は農民たちを救いたいのであれば、彼らのこういった面もきちんと理解して朝廷との和解を選び、長期戦で目的を達成していくべきだったのである。

この番組の最後では、将門が神に祭り上げられた理由について、お上に逆らえない日本人がある種の憧れを抱いていたからだという説を唱えていたが、私は前述の事柄から我が身可愛さに将門を見捨てた農民たちが、その罪悪感を解消したかったからではないかと考えている。

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